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「原発を稼働させると、各工程で『核のゴミ』が必ず発生する。それは、ウラン鉱山にも、ウランの精錬工場にも当てはまる」──。
2014年6月21日、東京・八王子の「八王子市民放射能測定室ハカルワカル広場」で、映画『ジャビルカ』の上映会が開かれた。1回目の上映後、この映画の日本語版監修を担当した細川弘明氏(京都精華大学教授、原子力市民委員会)が、ウラン鉱石採掘を巡る、あまり知られていない問題について解説した。細川氏は、ジャビルカ鉱山開発計画の反対運動にかかわり、計画が完全中止に至るまで尽力してきた。
『ジャビルカ』は、世界遺産に指定されているオーストラリア北部のカカドゥ国立公園内で、日本の電力会社も出資して進められたウラン鉱山開発と先住民族(アボリジニ)の闘いを描いた、1997年のドキュメンタリー作品。アボリジニの聖地が点在するジャビルカ地区で持ち上がったウラン採掘計画を巡って、環境汚染、少数民族差別など、さまざまな問題が提示されている。そして、オーストラリアで掘り出されたウランの多くは、日本の原発で使われているという。
- 記事目次
- 米国の先住民居住地に押しつけた日本の核ゴミ
- 中国とインドがウランを欲しがる理由
- 話・質疑応答 細川弘明氏(映画「ジャビルカ」日本語版監修者、京都精華大学教授、原子力市民委員会事務局長)
細川氏は「原発事業を営む電力会社は、自分たちに都合の悪い事実は公表しない」と語る。ウラン鉱山開発の前工程には、原発の燃料になるウラン鉱脈を探す段階があり、その試し掘りでも核のゴミが出ることを説明し、「往々にして、その時のゴミは放置されたままになる」と指摘した。
日本の電力会社は、海外からウランを輸入して原発を稼働させてきたが、「もともとは、国内産のウランで原発を動かそうと考えていた」と細川氏は言う。だが、国内ではウラン含有率が高い鉱石が見つからず、これではコストがかさむとの理由で、オーストラリアなどからのウラン輸入へと切り替えが進んだ。
米国の先住民居住地に押しつけた日本の核ゴミ
国内産ウラン採掘の舞台になったのは、「人形峠」と呼ばれる鳥取と岡山の県境にある地域。1955年にウラン鉱脈が発見されたことを受け、原子燃料公社(現独立行政法人日本原子力研究開発機構)が、そこを掘ってみたのだが、出てくるのは質が悪いウラン鉱石ばかり。結局、燃料に使われなかった鉱石が山積みにされ、全体で45万立方メートルもの「放射性残土問題」を地元にもたらすことになった。採掘現場では、「天然ウランは危険ではない」との言説がまかり通っていたという。
「こうした残土は、核のゴミの中では、おそらく危険度は一番低いと思うが、量が多いために放置されてしまうのだ。一部地域では住民が裁判を起こして勝っており、その地域の残土だけは回収され、米国(ユタ州の先住民居住地)に引き取ってもらった。しかし、裁判を起こさなかった地域では、残土は放置されたままになっている」。
細川氏は昨年10月に、自身が事務局長を務める原子力市民委員会が出した中間報告書で、核廃棄物の処理に関する提案がなされているとし、「政府は、残土問題を含め、核のゴミを処理する計画を用意せずに原発を動かしてしまった。今後、原発を続けていくにせよ、止めるにせよ、政府は国民が見える場所で、核のゴミ処理についてきちんと議論すべきだ」と訴えた。【IWJテキストスタッフ・富田/奥松】
※ 2013/11/30 【新潟】原発ゼロを目指しつつ「避けられない現実」に対処する ~原子力市民委員会「新しい公論形成のための中間報告」意見交換会
中国とインドがウランを欲しがる理由
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